人形劇のお弁当

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人形劇、パネルシアター、紙芝居、マジックエプロン、童話、のぞきからくり、絵本の読み聞かせ、人形パフォーマンス、ストーリーテリング、絵話などの情報もてんこ盛り!

一週間の花嫁

 

若き科学者ボブの未来は、前途有望で輝いていた。公私ともに充実し、満ち足りた日々を送っていた。

ある晴れた日、彼は恋人のサラを助手席に乗せ、海岸沿いをドライブしていた。激しく風になびくサラの長い髪が、車のスピードの速さを物語っている。

そこはリアス式海岸に沿った、カーブの連続する険しい道だった。直線に入ったかと思えばすぐに急カーブが現れ、それを抜けるとまた直線が続く。ボブはまるでレーサーにでもなったような気分で、小気味よくハンドルとアクセルを操っていた。

「危ないから、もう少しスピードを落として」

サラが不安そうに声をかける。

 

ボブも「少し出しすぎたか」とアクセルを緩めようとした、その瞬間だった。対向車がセンターラインを大きくはみ出して突っ込んできたのだ。

このままでは正面衝突する――。ボブは渾身の力でブレーキを踏み込み、必死にハンドルを切った。

車は辛うじて海への転落を免れたが、勢いそのままに反対側の崖へと乗り上げ、むき出しの岩肌に激しく激突して止まった。原因を作った対向車は、何事もなかったかのように走り去っていく。

 

「ふーっ……!」

ボブは大きく息を吐き出し、隣のサラを見た。

彼女は頭から血を流し、ぐったりと動かなくなっていた。ボブ自身の額からも血が流れていたが、そんな痛みは気にならなかった。

「サラ! サラ! 嘘だろ、目を覚ましてくれ!」

必死に揺り動かしたが、彼女の頭は力なく、がくりと傾くだけだった。サラは、息をしていなかった。

 

現実を受け入れられないまま、ボブは震える手で救急車を呼んだ。すぐに救急車が到着し、病院へ搬送されたが、そこで告げられたのは無情な「死亡宣告」だった。あまりにも打ち所が悪かった。

「なぜ、僕だけが生き残ってしまったんだ」

プロポーズをしようと決意していた矢先の悲劇。絶望が、ボブを暗い底へと突き落とした。

 

霊安室に案内され、さっきまで楽しそうにおしゃべりをしていた最愛の人の遺体の前で、ボブは泣き崩れた。

「しばらく、二人きりにしてください……」

看護師が気を利かせて退室し、部屋にはボブとサラだけが残された。その時、ボブは狂気とも言える行動に出る。鞄から注射器を取り出し、サラの体に迷わず突き刺したのだ。

シリンジの中にあったのは、彼が研究室から持ち出した、小さなボトルに入った謎の液体だった。

 

研究はまだ成果を出しておらず、最終的に臨床試験を行う段階のものではあった。亡くなった恋人を人体実験の道具にするなど、科学者として、人間として許されることではない。彼の研究は、蝕まれた臓器に幹細胞を注入して組織を再生させるためのものだった。

死んでしまった臓器であっても、ひょっとしたら脳が刺激を受け、再び心臓や肺を動かしてくれるのではないか――。ボブはそんな一縷の望みにすべてを賭けたのだった。

 

しかし、奇跡は起きなかった。夢物語は虚しく消え去り、サラは棺に納められ、静かに墓地へと埋葬された。

サラの両親からは「娘を返して」と泣き叫ばれたが、ボブには返す言葉もなかった。スピードを出しすぎた自分に責任がある。だが、あの対向車さえいなければ……。そんな行き場のない怒りと後悔だけが彼を蝕んでいく。

 

人はいつも、最悪の事態が起きてから激しく悔いるものだ。「あの時、スピードを落としていれば」「あの道を選ばなければ」。ボブは終わりのない後悔の念に苛まれ続けた。

そうして、涙に暮れたまま一ヶ月が経ったある日のこと。ボブはサラの墓前に伏していた。

 

その時、かすかな物音が足元から聞こえた気がした。墓の下からだ。

「まさか……サラが生き返って、棺の中で苦しんでいるんじゃないか?」

一度生まれた狂おしい妄想はボブの心を支配し、彼は我を忘れて素手で墓の土を掘り返し始めた。

棺の蓋をこじ開けると――そこには、息をして生きているサラの姿があった。

 

ボブが開発していた幹細胞には、自己のクローンを作り出す強力な働きがあった。サラの体の一つ一つの細胞が、一ヶ月の時間をかけて新しく生まれ変わり、彼女を蘇生させたのだった。

ボブは歓喜し、彼女を自宅へと連れ帰った。しかし、神の領域に触れた代償は、あまりにも残酷な形で現れる。

新しく生まれたクローン細胞には、あらかじめまさかの「寿命のタイマー」が組み込まれていた。それも、通常の人間より遥かに短いタイマーだった。サラに残された時間は、あまりにも少なかった。

 

それからの日々、ボブは残された時間のすべてをサラに捧げた。一週間のうちにプロポーズをして、ささやかな結婚式を挙げ、ハネムーンにも出かけた。サラは夢のような時間を、「花嫁」として駆け抜けた。

そして一週間後、彼女は再び、静かに息を引き取った。

 

愛する人を二度失ったボブを待っていたのは、冷徹な現実としての裁判だった。彼女を生き返らせた奇跡の代償。その法律と倫理の壁が、再び二人を永遠に引き裂こうとしていた。

 


シン・潜入捜査

 

犯人を捕まえるため、あるいは麻薬密売組織を壊滅するため、敵の仲間に成りすましてアジトに潜り込む。これを「潜入捜査」と呼ぶ。潜入した捜査官には、常に「身元がばれれば殺されるかもしれない」という大変な危険が伴う。

 

実は、この逆のパターンもある。悪の組織から警察に潜入し、内部情報を盗んだり捜査を邪魔したりするのだ。これもまた、犯人の手先だとばれれば一味が芋づる式に捕まり、組織が一気に壊滅に追い込まれるため、犯人側にとっても非常にリスクが高い。

 

いずれにせよ、潜入捜査には巨大なリスクが付きまとう。そのため、警察も暴力団組織も基本的には避ける傾向にある。表の社会から裏の社会へ、あるいはその逆へ。潜入捜査に選ばれた者は、それまでの人生を一旦捨てなければならない。

 

しかし――もし、自分の人格を否定されることもなく、これまでの人生を捨てる必要もない潜入捜査があるとしたらどうだろう。すぐに犯人のアジトを発見し、逮捕につなげることができる。それこそが「シン・潜入捜査」だ。

 

昨今、電話を使った詐欺が横行している。犯人たちは「直接対面しないから」「言葉巧みに騙せるから」と安心して犯罪を続けているが、電話を切ってもその履歴は、足跡のように電話線や電波の中に残ってしまう。

そこで潜入捜査官は、「エネルギー生命体」となって電話線をたどり、犯人のアジトへと潜入する。

 

もちろん、犯人がいる時間帯に潜入すれば袋叩きに遭ってしまう。そのため、犯人が事務所を閉めた夜中などに、そっと受話器から潜入して場所を突き止める。ただし、メモや携帯電話などは一切持ち込めない。エネルギー体となった捜査官自身の「記憶」だけが頼りだ。

この潜入捜査の実績は世間に公表されていないが、確実に日を追うごとに上がってきている。

 

しかし、この捜査には最大の弱点がある。それは、潜入するときは「生身のエネルギー体と言う裸」で潜り込まなければならない点だ。もし犯人たちが事務所を閉める際、用心のために電話機を冷凍庫に入れてしまったら、潜入したトタン捜査官はうまい具合に冷凍されてしまう。次の日に犯人が冷凍庫を開けたときには、あっさり相手に捕まってしまうのだ。

 

これは「透明人間」によく似ている。透明人間になれる薬を飲んでも、服を着ていては意味がない。裸にならないと透明人間として活動できないのと同じだ。そのため、風邪を引きやすい人は透明人間にも、この潜入捜査官にも向いていない。虚弱体の人間には不利となる仕事だ。

だから、昼夜を問わず体を鍛え続けなければ、潜入捜査官は務まらないのだ。

 

最近では、給料が高いにもかかわらず、この潜入捜査官のなり手が不足している。「あいつ、体を鍛えているな。潜入捜査官かもしれない」と周囲に気づかれると、犯人グループから暗殺される危険があるため、日常生活でも身分を隠し続けなければならない。

 

潜入方法の形は変われども、昔も今も、潜入捜査官が超ハイリスクな職業であることに変わりはない。潜入捜査官になるかならないかは、あなた自身が決めてください。

 


昔話「天狗の隠れ蓑」

 

むかしむかし、あるところに、彦一という、ちょっとお調子者で、いたずら好きな男がいました。

ある日のこと、彦一は山の中で、天狗が不思議な 「蓑」 を持っているのを見つけました。

その「蓑」を体にまとうと、なんとスウッと姿が消えてしまう、天狗の宝物 『隠れ蓑』 だったのです。

 

「へえ、ありゃあいいものだ。なんとかして、だまし取ってやろう」

彦一はそう考えると、落ちていた竹の筒を拾って、片方の目でのぞき込みました。

そして、わざと大きな声で言いました。

「おや、これは不思議だ! この竹の筒をのぞくと、遠くの街や、海の向こうの国まで、なんでもよーく見えるぞ!」

 

これを聞いた天狗は、びっくり!

「なんだって? そんなおもしろいものがあるのか。おいお前、その竹の筒と、俺の隠れ蓑を交換してくれ!」

「ええー、これは宝物だからダメだよ」

彦一はわざといやがってみせましたが、天狗があまりにも頼むので、ついに隠れ蓑と竹の筒を交換してあげました。

天狗はだまされているとも知らず、大喜びで竹の筒をのぞきながら、山へ帰っていきました。

 

さて、念願の「隠れ蓑」を手に入れた彦一。

さっそく肩にかけてみると、あら不思議! 鏡を見ても、自分の姿がどこにも映りません。

「しめしめ、本当に姿が消えたぞ。よし、村へ出かけよう!」

彦一は姿が見えないのをいいことに、村の店にずいずいと入っていきました。

 

そして、お店のまんじゅうをパクパク、お酒をグイグイ。

お店の人は、お皿からお菓子がひとりでに消えていくので、

「ひええっ! お化けが出たぞー!」

と、腰を抜かしてしまいました。彦一はそれを見て、ケラケラと笑っていました。

 

腹いっぱいになった彦一は、家に帰ると、隠れ蓑をそこらへんに放り出して、そのままいびきをかいて寝てしまいました。

そこへ、彦一のおっ母さんがやってきました。

「おや、部屋の真ん中に、汚くてボロボロの『蓑』が落ちているねえ。汚いから、カマドの火で燃やしてしまいましょう」

 

おっ母さんは、それが宝物だとは知りません。

パチパチ、メラメラ。

隠れ蓑は、あっという間に燃えて、真っ黒な灰になってしまいました。

 

目を覚ました彦一は、大慌て!

「ああ! 俺の宝物が、灰になっちまった!」

でも、彦一はあきらめません。

「待てよ、この灰にも、不思議な力が残っているかもしれないぞ」

 

そう言って、残った灰を自分の腕に少し塗ってみました。すると、塗ったところだけ、スウッと姿が消えたのです。

「よし、これならまだ使える!」

彦一は着物をぜんぶ脱ぐと、頭のてっぺんから足の先まで、全身に真っ黒な灰を塗りたくりました。これでまた、すっかり透明人間です。

 

裸に灰を塗っただけの彦一は、またまた村の酒屋へ出かけました。

だれにも見えないのをいいことに、大きなお椀にお酒をなみなみと注いで、グイグイ、グイグイ、おいしそうに飲み始めます。

 

ところが、お酒を勢いよく飲んだせいで、口のまわりの灰が、お酒で濡れてペロッと剥がれ落ちてしまいました。

 

「おや? 空中に、人間の口だけが浮いているぞ?」

村の人が指をさして驚いています。

さらに大変なことに、お酒をたくさん飲んだ彦一は、体がポカポカと熱くなってきました。

「うわあ、暑い、暑い!」

体からじわじわと汗が噴き出してきます。

 

すると、どうでしょう。

汗と一緒に、体中に塗った灰が、ポロポロ、ポロポロと、床に落ちていくではありませんか。

「あれっ! 口のまわりだけじゃないぞ! 腕が出てきた、お腹が出てきた、お尻も出てきたぞ!」

「うわあ! 泥棒の正体は、ハダカの彦一だー!」

 

村人たちが大騒ぎで、棒きれを持って集まってきました。

「わあ、見つかっちゃった!」

体中、灰でまだら模様になったハダカの彦一は、お尻を叩かれながら、真っ赤な顔をして逃げていきましたとさ。

おしまい。

 


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