桂男の夢

誰でも夢の一つや二つはあるものです。桂男にも夢がありました。いつも見ている月に行くことでした。手を伸ばしても届きません。吉四六さんよろしく屋根の上に登って、梯子をかけようとしましたが届きません。

何万階もあるエレベーターなら届くかも知れないと思いました。エレベーターの箱が入る枠を、いくつもいくつもせっせと積み上げました。その甲斐あって枠は柱のようになって月まで届きました。一番下の枠に箱を入れました。

箱と枠の間は隙間が空いていましたが、電磁石で動くエレベーターには抵抗がなく、わずかな力で動くことができました。次から次へと上方向に力が働き、箱が月に人を運んでくれます。桂男は、箱の中に乗り込みました。

終点の月のボタンを押すと、あっという間に桂男は月に着きました。地球にいたときより身が軽くなって、ウサギのように飛び跳ねました。すでに住んでいたウサギたちが、仲間がやって来たと思い姿を現しました。